ガバナンス体制

当社は、気候変動対応を経営上の重要課題と認識し、気候変動対応を含めたサステナビリティ関連の重点課題については、執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会が目標達成に向けた方針・計画の策定を行うとともに、取り組みを推進しています。サステナビリティ委員会で検討した内容等は、取締役会で適宜審議または報告がなされるなど、取締役会による適切な監督体制を整えています。
対象事業となる建材事業本部においても、対象ユニットにサステナビリティ(気候変動含む)の推進責任者・担当を配置する体制としており、事業戦略・事業推進に気候変動関連の観点を反映しています。

気候変動関連対応のガバナンス体制

会議体、他体制

役割、担当

取締役会

気候変動対応の監督

サステナビリティ委員会

気候変動対応を含めたサステナビリティ関連の方針・計画の策定、重要事項の決定、重点課題の取り組みの推進

戦略

気候変動が当社ビジネスに及ぼす影響

世界中で異常気象による被害が相次いでおり、十分な対策を施さなければ被害はさらに深刻化し、地球規模の被害をもたらす危険性が指摘されています。こうした状況のもと、2016年に発効したパリ協定には、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つと共に、1.5℃に抑える努力を追求することが長期目標として定められています。

このように「2℃未満」のシナリオの実現に向けて世界が動こうとする中、当社ではこれをリスクと共に機会と捉え、具体的な行動指針・目標とする指標をサステナビリティ委員会で検討中です。

当社は、持続可能な社会を実現するため、当社及びステークホルダーの皆様ならびに社会にとって重要性が高く、持続可能な成長や企業価値の向上に向けて取り組むべき課題を重要課題として特定しました。これらの重要な課題に対応する目標の進捗状況を確認しながら、事業活動を通じて解決に取り組んでいます。

事業への影響が大きいと判断される事業分野から順次シナリオ分析を実施し、影響評価を行っています。シナリオ分析の結果を活用し、対応策の立案や行動計画の立案に繋げていきます。

想定シナリオ下における当社の戦略(シナリオ分析)

1. 対象事業の選定

主要事業である国内建材事業とする(2020年度実績での売上構成比59.2%)

各事業セグメントの売上構成比(%)

対象事業の構成

セグメント

分野

主な商材・サービス

住宅

再生可能エネルギー資材

太陽光発電システム、蓄電池

断熱資材

断熱材

住宅資材

外装材、住設機器、内装材

非住宅

建設資材

外装材、基礎杭、地盤改良工法、耐火被覆材

2. シナリオ群の定義(2℃・4℃の世界観)

不確実な将来を予測する為、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯のシナリオを選択、設定していく必要があります。そこで当社は国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)および国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の情報を参照し、2℃シナリオ(RCP2.6:シナリオ①)と4℃シナリオ(RCP8.5:シナリオ②)の2つのシナリオを選択しました。

出典:一般財団法人 環境イノベーション情報機構
(IPCC第5次報告書を一部改変)
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出典:一般財団法人 環境イノベーション情報機構
(IPCC第5次報告書を一部改変)

2℃シナリオ

(RCP2.6:シナリオ①)

  • 再生可能エネルギーへの転換や、省エネ規制の強化、炭素税の導入など大胆な政策や技術革新が進む
  • 脱炭素社会への移行に伴う変化が事業に影響を及ぼす可能性が高い社会(移行リスク)
  • 省エネ製品や脱炭素エネルギー技術等の需要拡大による関連商材の需要拡大

4℃シナリオ

(RCP8.5:シナリオ②)

  • 気候変動により異常気象の激甚化が進み、想定以上の風水害被害・原材料の枯渇・感染症発生リスクが高まる
  • 気候変動による物理的な被害が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会(物理リスク)

上記の予測に基づき、サステナビリティ委員会において、国内建材事業内各対象ユニットにおいてはリスク・機会の分析を実施・共有し、中長期視点で観測、今後の事業戦略に活かしていきます。

3. シナリオ分析の結果

2℃シナリオ

(RCP2.6:シナリオ①)

~市場の変容~

  • 調達先が、規制強化や炭素税導入によるコスト増を転嫁することで、価格競争力が大幅に低下する
  • 脱炭素社会への移行に伴い、建設市場においてもエンドユーザーの需要動向・選好が変容し、既存商材の陳腐化が進む
  • 市場変容や調達コスト増が、国内建材事業の再構成(ポートフォリオ転換)への圧力となる

4℃シナリオ

(RCP8.5:シナリオ②)

~不安定要素の増加~

  • 規制強化や炭素税導入の動きは緩慢で、シナリオ①ほどの需要動向・選好の変容は想定しづらい
  • ただし気候変動による不安定要素を慢性的に抱え、調達・販売ともに予期せぬトラブル(激甚気象・原材料枯渇・感染症など)に左右される
  • 施工面に於いても、気候不順や気温上昇による品質の低下を招きやすい
  • 顧客サイドから問われる供給責任に応えられない場合、売上の低下にも繋がる

気候変動のリスク及び機会

シナリオ群の定義(2℃・4℃の世界観)によって定義されたシナリオ下において、想定される具体的なリスク及び機会は下記の通りとなります。

2023年度の気候変動関連リスクの評価対象、発生時期見込

リスク区分

リスクの評価対象

発生時期見込

影響

移行リスク

政策・法規制リスク

GHG排出規制に関する制度の導入・強化によりコストが増加

中期

電力買取価格、補助金の減額により市場規模が伸び悩むリスク

中期

技術リスク

規制強化に伴う低炭素技術の普及による既存商品の競争力低下

長期

市場リスク

調達先の価格転嫁による利益率低下

長期

評判リスク

投資家や金融機関から情報開示が不十分と判断され、資金調達に悪影響を及ぼすリスク

中期

物理リスク

急性リスク

異常気象の常態化により調達先被災による供給の寸断

中期

慢性リスク

気温上昇に伴う建設現場での労働環境・生産性悪化・工期遅延

長期

2023年度の気候変動関連機会の評価対象、実現時期見込

機会区分

機会の評価対象

発生時期見込

影響

資源の効率に関する機会

鉄鋼価格の上昇に伴う軽量な代替素材のニーズ上昇

中期

エネルギー源に関する機会

長期的なCO_{2}削減目標の設定による再生可能エネルギー市場の拡大

中期

製品及びサービスに関する機会

新規協力会社(施工・加工)の開拓・提携による新たなソリューションの提供

中期

新規調達先の開拓・提携による新たな事業展開

中期

気候変動への適応に貢献できる商材・サービス拡大に伴う新規事業の創出

長期

市場に関する機会

ポートフォリオ転換による事業拡大

中期

サステナビリティ性が高い商材・サービスの需要増加

中期

リスク及び機会に対する戦略

中期経営計画サステナV(バリュー)において、カーボンニュートラル社会の実現に向けて変化する市場の中で、成長機会を捉えた戦略組み立てによる価値創造を実施してまいります。サステナブルな社会に貢献する省エネ化、省力化を通じ、ターゲット市場で必要な機能、ソリューションを提供し、持続的発展が可能な社会の構築に貢献します。

省エネ化

断熱分野、エネルギーソリューション分野を始めとした建築物のエネルギー有効利用を追及するソリューションの拡大

省力化

製造・加工等の機能を加えたことで、品質・施工性・作業環境を改善し、サプライチェーン全体の省力化に貢献するソリューションの提供

リスク管理

当社グループにとって、気候変動は重要なリスクの一つであり、グループで取り組むリスクと認識しています。

当社グループでは気候変動のリスク及び機会について、サステナビリティ委員会メンバーの参加するワーキンググループを設置しました。ワーキンググループでは、TCFDの提言に基づいたシナリオ分析を行い、重要なリスク及び機会を特定し、影響の度合いを評価しました。引き続き、サステナビリティ委員会において、継続的にリスク分析、対策の立案、進捗管理をしてまいります。

現在、当社では、全社的なリスクマネジメント体制の中のひとつとして、環境に関するリスクマネジメント体制を構築しています。気候変動リスクへの対応を進めていくために、環境管理委員会、サステナビリティ委員会及びリスク管理委員会で連携し、会社として統合的なリスク管理を行い、実効性を高めております。今後も引き続き、気候変動リスクを評価・対応するための体制の充実に取り組んでいきます。

指標と目標

当社では、2021年度から温室効果ガス(GHG)Scope1、2の排出量の算定を始めております。現在排出量の算定が終了したのは当社のみですが、今後対象を順次拡大し、そのほかの国内外の当社グループ会社についても、排出量の算定を進めてまいります。

Scope3については、当社はサプライチェーンの全体スキームを構築し、必要な機能・ソリューションを提供する機能商社として、サプライチェーン全体のカーボンニュートラルを推進することが社会的責任だと認識しております。

現時点では、GHG排出量削減にあたっての目標は、当社グループ全体のGHG排出量の算出が終了していないために設定しておりませんが、排出量の算定が終わった拠点については、定期的に排出量を点検し、削減に努めてまいります。

当社グループでは、今後も引き続き、サステナの先進商社としてサステナビリティ社会の実現に向けて、継続して積極的に取り組んでまいります。

当社グループのGHG排出量 (2023年度)※1

Scope1,2

Scope3

高島(単体)

198.28トン

-

国内グループ会社 ※ 2

3,065.72トン

-

海外グループ会社

-

-

※1 マーケット基準
※2 国内子会社7社(ハイランド㈱、アイタックインターナショナルジャパン㈱、タクセル㈱、シーエルエス㈱、 ㈱レスト、新エネルギー流通システム㈱、高島ロボットマーケティング㈱)の合計